神づくし

柳家小三治独演会 松戸

柳家一琴 初天神
柳家小三治 死神
中入り
柳家小三治 千早ぶる

1000人規模の会場。
最初は小三治さんの7番目の弟子という一琴さん。
目鼻立ちはっきりして、頭も体も丸い。
クレヨンハウスの落語絵本でしか知らなかった「初天神」が聞けて嬉しかった。
季節がらか?後半の凧揚げシーンはなく、飴と団子をねだるところまで。
お祭りに息子を連れていった父が自分が凧揚げに夢中になってしまう件、好きなのだが。

前座さんなの?貫禄さえ感じる一琴さん。
子どもをあらわすのに、ことさらに声を幼くしなくても、
目線ひとつでかわいらしさがでるんだなぁ。

落語絵本 三 はつてんじん (落語絵本 (3))

落語絵本 三 はつてんじん (落語絵本 (3))


小三治登場。
掛け声なく、拍手がさざ波のように長く響いていた。
いかんいかん、「プロフェッショナル」のテーマソングが浮かんでくる。
湯呑はあるか? のどの調子はどうだろう?なんていらぬ心配も。
淡々と世相、景気の話をしながら「死神」へ。
(ああっ、これもプロフェッショナル!)
一瞬テレビの場面を思い出すも、冒頭から目の前の小三治ワールドに引き込まれていった。
金策がうまくいかず、妻にも罵られ、首をくくろうとする男。
弱さのなかに意地が見え隠れて、憎めない愛嬌がある。
死神登場。
荒縄を腰に巻き、あばらが見え、貧弱だが恐ろしげな様相。
語りの部分はぐっとクールで、あたりの空気も変わる感じ。
死神が口を開けば、飄々として俗物的なおかしみが漂う。
死神に教えられた通りに、長患いしている人の生死がわかるようになった男。
さっそく医者の看板を掲げ、名医の評判が高まり、たちまち財をなす。
お決まりのように古女房と子どもを捨てて、遊び三昧。
どんちゃん騒ぎの旅から戻るとー!

調子にのった男の浮き沈み。
まくらでの“虚業でいい思いをしている人たちの話”と重なり、おかしみもひとしお。
起死回生の思いがけないアイデアに大笑い。
でもそれがあだになって、寿命があとわずかに。
死を前におろおろしながらも真剣みがない男と
非情なはずなのに情を見せる死神のやりとり。
どうなる?また意外な展開が?えっ?ああ…
終わり方、いいなぁ。あっけなくて。

一本芝居を見たあとのよう。堪能しました。


中入り後のまくらは、陽気に。
大作の「死神」を先に持ってきたのはあるわけがあったのだった。
会館の終了時間に「蛍の光」が必ず流れることになっていることを今日知ったとのこと。
やや間があっての、「誰にも止められないんです」というつぶやきがもう!!
時間内に終わらせることはいくらでもできる。
ろうそくの炎が消えれば命も終わりという噺のあとで、その曲流れたら、ちょとそれはね。

野球話も。今年は阪神ファンでしたと言いつつ、実は筋がね入りの巨人ファンの師匠。
お若いころは、落語協会の野球チームでピッチャーだったとか。

知ったかぶりが一番いけないという話から「千早ぶる」
知ったかぶりから、業平の歌が荒唐無稽な関取・花魁悲恋の物語へ。
後半の乞食の元花魁が登場してからが、ばかばかしさがダイナミックになってイイ。
しかし和歌の素養がないからか、こちらには「死神」ほど入り込めず残念。
お正月は、百人一首やりなおそうか、落語のため。


落語名人会(41)死神

落語名人会(41)死神